a-3) 光化学系IIの構造と機能(旧、種々の環境ストレスに耐性な光独立栄養細胞の選抜とさらなる解析)


 塩ストレスに耐性な光独立栄養変異細胞を選抜し、 そのチラコイド膜における耐性機構を生化学的・分子生物学的に解析しています。 その結果、 耐塩性の細胞では光化学系IIの酸素発生系23kDタンパク質がより強固にPSII複合体に結合していることを明らかとしています。 現在さらにOEC23の機能を解析するため、大腸菌での発現系とin vitro再構成系を確立し、 OEC23のN末端配列の重要性を明らかとしています (Biochim. Biophys. Acta, 1546/1: 196-204, 2001 PubMed=11257522)。

 さらに、大腸菌で発現したタンパク質をもとに、世界に先駆け、OEC23 (PsbP)の結晶構造の解析に成功しました(EMBO Rep. 5(4):362-7, 2004 ,PubMed=15031714)。(OEC23の構造解析の詳細は、下記のプレスリリースの説明を参照してくださいhttp://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2004/040312_2/

 一方、OEC23の発現を抑制した形質転換体を新規な遺伝子発現抑制法である RNA干渉法(RNAi法)用いて作製することに成功し、OEC23の生理的機能について新たな知見が集積しつつあります( Ishihara, S. et al., Functional analysis of four members of the PsbP family in Photosystem II in Nicotiana tabacum using differential RNA interference. Plant Cell Physiol., 46(12): 1885-1893. 2005 , Ifuku , K.et al., PsbP protein, but not PsbQ protein, is essential for the regulation and stabilization of Photosystem II in higher plants, Plant Physiol. 139: 1175-1184。また、OEC33(PsbO)やOEC17 (PsbQ)の変異株、あるいは形質転換体の作製も進んでおり(Murakami, R. et al., Functional dissection of two Arabidopsis PsbO proteins, PsbO1 and PsbO2. FEBS J. 272(9): 2165-75 (2005))、これまで未解明であった酸素発生系の解析が急速にしてきたといえます。

(写真は耐塩性タバコ培養細胞)


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