a-1) 葉緑体機能分化の解析(核様体タンパク質CND41を介した制御機構)


 光合成のみで生育する光独立栄養培養細胞株を育成し、植物の持つ光合成機能を細胞ならびに分子レベルで解析しています。

(右の写真は光独立栄養培養細胞株)

 例えば、葉緑体の遺伝子発現調節機構の解明を目指して、 葉緑体DNAに結合するタンパク質CND41のcDNAを単離するとともに、その発現を抑制した形質転換体の解析、精製したタンパク質の生化学的解析 (Plant Cell, 9; 1673-1682 (1997) PubMed=9338968, FEBS Lett. 468;15-18, 2000 PubMed=10683432)、発現の解析を進めてきました。その結果、葉緑体DNA結合性プロテアーゼCND41の多面的機能が分かってきています。

 1)CND41のようなDNA結合性プロテアーゼは知られておらず、その存在自体が興味深い事ですが、 それに加え、CND41が緑葉において炭酸固定酵素であるRubiscoを特異的に分解することが明らかとなってきました。特に、タバコCND41は、老化時のRubiscoの分解と窒素の転流において重要な役割を果たすことがわかってきました(Kato, Y. et al., The DNA-binding protease, CND41, and the degradation of ribulose-1,5-bisphosphate carboxylase/oxygenase in senescent leaves of tobacco. Planta, 220 (1): 97 - 104 2004, Kato, Y. et al., Post-translational regulation of protease activity of CND41 in senescent tobacco leaves. Planta, 222, 643-651(2005)

 この結果は、これまで不明であった植物緑葉の老化の機構解明に新たな視点をもたらすものです。植物の老化をコントロールすることにより、より日持ちのよい植物、あるいは、より効率的に生育できる植物の育成にもつながることも期待できます。現在、CND41の研究から老化の制御の分子機構を解明すべく研究を進めています。

 2)また、CND41の発現を抑制した形質転換体では生育の抑制が起こることが認められます。そのことをきっかけとして CND41がジベレリンの生合成系を介して個体の生長にも関与していることを明らかとしています(詳しく知りたい方は 蛋白質核酸酵素、45;147, 2000,Physiol. Plant. , 117(1):130-136を参照ください)。

 現在さらに、葉緑体の複製に関わる因子を単離すべくサブトラクションライブラリーを構築し、関連遺伝子の単離を試みています。

(左の写真は葉緑体DNAタンパク質複合体(核様体) (×50000) )


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